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名古屋地方裁判所 昭和42年(わ)135号 判決 1967年8月04日

本籍

愛知県知多郡美浜町大字河和字上前田一八番地

住居

同県同郡同町大字河和字上前田一四番地

会社役員

加藤正男

大正六年七月一日生

右の者に対する昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法違反被告事件について当裁判所は検察官田中豊出席のうえ審理を遂げ次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月および罰金二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は肩書地において水飴の製造販売を営業目的とする加藤化学株式会社を経営し、右会社の代表取締役をしている者であるが、所得の一部を秘匿あるいは圧縮して所得税を免れようと企て

第一、昭和三八年分の所得として配当所得、不動産所得、給与所得、雑所得がありその総所得金額一、九五二万四、九八八円であり、それに対する所得税額は八〇九万四、一六〇円であるのに雑所得となるべき利息収入の全額を計上せず、かつ配当所得、不動産所得を圧縮計上して同三九年三月一六日所轄半田税務署において、同署長に対し、総所得金額を八三二万四、二四三円、これに対する所得税額一九四万二、五二〇円である旨過少の所得税確定申告書を提出し、もつて不正に所得税額六一五万一、六四〇円を逋脱し

第二、昭和三九年分の所得として配当所得、不動産所得、給与所得、譲渡所得および雑所得がありその総所得金額は一、六四七万二、八二三円でありこれに対する所得税額は六三九万六、七一〇円であるのに雑所得となるべき利息収入の全額を計上せず、かつ配当所得と不動産所得を圧縮計上して昭和四〇年三月一五日前記半田税務署において、同署長に対し総所得金額を八一九万一、七八六円これに対する所得税額を一八〇万六九〇円である旨過少の所得税確定申告書を提出し、もつて不正に所得税額四五九万六、〇二〇円を逋脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書六通

一、名古屋国税局収税官吏大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書五通

一、右大蔵事務官作成の脱税額計算書二通

判示第一、第二事実中

配当所得関係

一、松永泰彦作成の申立書と題する書面

一、名古屋国税局収税官吏大蔵事務官作成の岡部住次、松永守市に対する各質問てん末書

一、平野功(四)通、細川良吉、趙竜行、斎藤増治作成の大蔵事務官に対する配当金の照会についての回答書と題する各書面

一、中尾会計事務所員作成の配当支払明細書と題する書面

一、松永守市、遠山道男の検察官に対する各供述調書

判示第一、第二の事実中

不動産所得関係

一、名古屋国税局収税官吏大蔵事務官作成の不動産所得計算調書および調査報告書(昭和四一年七月八日付)

一、押収してある

1、昭和三九年九月二五日付土地賃貸借契約書一通(昭和四二年押第一二五号の一)

2、昭和三八年九月二三日付土地賃貸借契約書一通(昭和四二年押第一二五号の二)

3、昭和三八年五月一日付土地賃貸借契約書一通(昭和四二年押第一二五号の三)

4、昭和三九年六月一三日付土地賃貸借契約書一通(昭和四二年押第一二五号の一二)

一、日比元明外二名作成の土地賃貸借契約書写一通

一、被告人作成の委任状(写)一通

一、日比元明作成の確認書と題する書面

一、名古屋国税局収税官吏大蔵事務官作成の松本豪、服部大、日比元明、木村正夫に対する各質問てん末書

一、名古屋市南区長及び西尾市長作成の各固定資産税に関する回答書

一、東海銀行笠寺支店長山寺祥照作成の当座預金証明書および普通預金証明書二通

雑所得関係

一、証人山崎金三郎、同長谷川益洙の当公判廷における各供述

一、加藤万基こと李万基(二通)、長谷川益洙(二通)、奥山宗雄、伴重義、中山新七郎の検察官に対する各供述調書

一、名古屋国税局収税官吏大蔵事務官作成の加藤万基こと李万基(二通)、長谷川益洙(四通)、奥山宗雄(二通)、伴重義(二通)、八谷正夫(二通)、中山新七郎に対する各質問てん末書

一、八谷正夫作成の証明書と題する書面

一、押収してある手帳一冊(出光興産株式会社発行)(昭和四二年押第一二五号の四)

一、押収してある貸付手控一綴(昭和四二年押第一二五号の五)

一、押収してある営業日報一綴(昭和四二年押第一二五号の六)

一、押収してある手帳一冊(表紙に英文メモランダムの記載、昭和四二年押第一二五号の七)

一、押収してある昭和三七年度総勘定元帳一綴(昭和四二年押第一二五号の八)

一、押収してある昭和三八年度元帳一綴(昭和四二年押第一二五号の九)

一、押収してある総勘定元帳一綴(昭和四二年押第一二五号の一〇)

一、押収してある手形メモ一綴(昭和四二年押第一二五号の一一)

一、山田泰吉作成の証明書と題する書面四通

一、名古屋国税局収税官吏大蔵事務官作成の手形裏書調書および貸金調書および資金出所調書、および貸付状況一覧表および利息額計算書二通および調査報告書八通、および支払利息調書二通

一、久松富佐雄作成の上申書と題する書面

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法附則三五条により昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法六九条、罰金等臨時措置法二条に該当するところ、所定刑中懲役刑と罰金刑を併科して処断することとし以上は刑法四五条前段の併合罪なので懲役刑については同法四七条本文一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪の所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役六月および罰金二〇〇万円に処することとし、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。なお右懲役刑については諸般の情状を考慮し、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右の刑の執行を猶予し主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野村忠治 裁判官 松永剛 裁判官 植田俊策)

別表1

犯則所得の内容及び脱税額の計算

(昭和38年分)

<省略>

別表2

犯則所得の内容及び脱税額の計算

(昭和39年分)

<省略>

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